1925~1944年を中心に、日本・英国・米国・フランス・ドイツの 言論・出版統制を比較した独自指数である。 0~10点で、数字が大きいほど国家または占領当局による 言論・出版への統制が強い。
次の5項目をそれぞれ0~2点で採点し、合計10点満点とした。
| 項目 | 0点 | 1点 | 2点 |
|---|---|---|---|
| A 発禁・停止 | 原則として司法手続 | 行政的発禁が例外的に存在 | 行政的発禁を恒常的に使用 |
| B 事前統制 | ほぼなし | 特定分野・自主検閲等 | 広範な事前検閲・事前指示 |
| C 編集介入 | 編集内容は基本的に自由 | 禁止事項・強い自主規制 | 何をどう報道するかまで指示 |
| D 出版業統制 | 業界自体は自由 | 資材・経営等への間接統制 | 新聞社・記者・出版業自体を統制 |
| E 政治言論統制 | 政権・政府批判が基本的に可能 | 一部分野で強い規制 | 体制・政治思想への批判を広範に規制 |
※ 範囲で評価したものについては、棒グラフでは中間値を用いて表示している。
| 国・時期 | A 発禁 |
B 事前統制 |
C 編集介入 |
D 出版業統制 |
E 政治言論 |
指数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 英国 1925~38 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 米国 1925~40 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| フランス 1925~38 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0~1 | 0~1 |
| ワイマール・ドイツ 1925~32 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 |
| 日本 1925~27 | 2 | 1 | 0 | 0 | 2 | 5 |
| 日本 1928~30 | 2 | 1 | 1 | 0 | 2 | 6 |
| 日本 1931~36 | 2 | 1 | 1 | 1 | 2 | 7 |
| ナチス・ドイツ 1933~44 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 10 |
| 日本 1937~40 | 2 | 2 | 2 | 1~2 | 2 | 9~10 |
| 日本 1941~44 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 10 |
| 英国 1939~44 | 1 | 1 | 1 | 1 | 0~1 | 4~5 |
| 米国 1941~44 | 0~1 | 1 | 1 | 0~1 | 0 | 2~4 |
| 占領下・ヴィシー・フランス 1940~44 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 10前後 |
| GHQ占領初期 | 2 | 2 | 2 | 1~2 | 2 | 9~10 |
日本では新聞・雑誌の発禁号数が1932年に非常に多かった。 しかし1941~44年には、新聞社の統合、用紙などの資材統制、 編集方針への介入などが進んだ。
このため、単純な発禁件数だけなら1932年がピークになっても、 言論統制全体としては1941~44年の方が強いと評価できる。
英国や米国でも第二次世界大戦中には軍事情報、国際通信、 郵便などに強い規制が存在した。
しかし、「軍艦の位置を報道してはならない」という軍事機密規制と、 「政治体制や政府に対する批判的思想を広範に禁止する」という統制は 同一ではない。
そのため本指数では「政治言論統制」を独立した項目としている。
1940年以降のフランスは、ドイツ占領地域とヴィシー政権に分かれており、 1920~30年代の第三共和政フランスと単純に同一の政治体制として 扱うことはできない。
GHQによる検閲は日本政府自身による統制ではなく、 日本を占領していた連合国最高司令官総司令部による占領行政である。
比較のため同じ表に掲載しているが、 主権国家政府による統制とは別カテゴリーとして理解する必要がある。
| 年 | 日本 | ドイツ・英国・米国・フランスなど |
|---|---|---|
| 1925 | 治安維持法制定。 新聞・雑誌の発禁175号。 | 英国・米国・フランスでは平時の出版自由体制が基本。 |
| 1928 | 治安維持法改正。最高刑に死刑を導入。 | ワイマール・ドイツでは共和国保護を理由とした新聞禁止制度が存在。 |
| 1930 | 新聞・雑誌発禁539号。 | ― |
| 1931 | 満州事変。新聞・雑誌発禁881号。 | ― |
| 1932 | 新聞・雑誌発禁2,246号。 この統計系列では突出したピーク。 | ワイマール共和国末期。 |
| 1933 | 発禁・削除・警告などによる言論統制が継続。 | ヒトラー政権成立。自由な新聞制度を急速に解体。 |
| 1933年10月 | ― | ドイツで編集者法制定。記者・編集者の職業自体が国家統制下に置かれる。 |
| 1935 | 天皇機関説事件。美濃部達吉の著書などが発禁。 | ― |
| 1936 | 不穏文書臨時取締法。 | ― |
| 1937 | 日中戦争開始。報道指導・事前統制が強化される。 | ― |
| 1938 | 国家総動員法制定。 | ― |
| 1939 | ― | 第二次世界大戦開始。英国・フランスでも戦時報道規制が強化される。 |
| 1940 | 情報局設置。新聞の整理統合や報道統制が進む。 | フランス敗戦。ドイツ占領地域とヴィシー政権が成立。 |
| 1941年1月 | ― | 英国政府が Daily Worker と The Week の印刷・発行・頒布を禁止。 |
| 1941 | 治安維持法全面改正。 新聞紙等掲載制限令、新聞事業令などによって新聞・出版統制をさらに強化。 | 米国参戦。Office of Censorship設置。 |
| 1941~44 | 新聞産業・資材・編集内容まで含む包括的な戦時統制。 | ナチス・ドイツでも宣伝省が新聞内容を具体的に指示。 |
| 1944 | 戦時言論統制が継続。 | ドイツの新聞数は1933年の約4,700紙から約1,100紙まで減少。 |
| 1945年8月 | 日本敗戦。戦前・戦時型の統制体制が終了。 | ― |
| 1945年~ | GHQ/CCDによる占領検閲が開始。新聞・雑誌・書籍などが検閲対象となる。 | 日本政府ではなく占領当局による統制。 |