「これをやれば出生率が2.1に戻る」という万能政策はありません。
むしろ国際比較から見えてくるのは、
子どもを持つことによる「経済的・時間的・キャリア上の損失」を小さくする政策
が比較的有効、ということです。
OECDも、出生率には所得、住宅費、雇用、保育、育休、男女の家事育児分担などが複合的に影響し、特に仕事と家庭を両立しやすい国ほど出生率が高い傾向を確認しています。
| 国 | 有効性が期待される政策 |
|---|---|
| 🇫🇷 フランス | 保育・児童手当・税制・多子世帯支援 |
| 🇸🇪 スウェーデン | 長期の有給育休+保育+父親の育児参加 |
| 🇩🇰 デンマーク | 育休→保育への切れ目のない接続 |
| 🇭🇺 ハンガリー | 大規模な住宅・税制・現金給付 |
| 🇮🇱 イスラエル | 高い出生率+家族政策・社会規範 |
ただし、フランスや北欧でも現在は出生率が低下しています。つまり「成功した国」も少子化そのものを完全に止めたわけではありません。OECD平均の出生率は2022年に1.5まで低下し、フランスも1.79でした。
これはかなり強いエビデンスがあります。
例えばデンマーク、ノルウェー、スウェーデンなどでは、
出産
↓
有給育休
↓
保育所
↓
母親が仕事復帰
という制度が連続しています。
つまり、「子供を産んだら仕事を辞めなければならない」という状態を避ける。
OECDも、有給育休+手頃な価格の質の高い保育は、男女が仕事と家庭を両立することを可能にし、出生率と正の関係があるとしています。
ここは日本にかなり参考になります。
ドイツでは2007年に育休制度を改革し、父親が育休を取得すると追加の給付期間を得られる仕組みを導入しました。
研究では、この改革後、高学歴女性の第1子・第2子出生確率が上昇したという結果があります。
また、北欧でも、父親が育休を取得する家庭ほど第2子を持つ可能性が高いという研究があります。
ただし、これは万能ではありません。スペイン、韓国、ノルウェーでは父親向け育休拡充が出生率を押し上げなかった研究もあります。
したがって、「男性育休○日」だけでは駄目です。
これはローマ党でかなり検討する価値があります。
OECDの分析では、住宅費の上昇は出生率と明確な負の関係があります。
つまり若者が、
就職
↓
結婚
↓
子供
と進もうとしても、「家賃が高すぎる」「家が狭すぎる」となると子供を持つ時期が遅れます。
これは現金給付よりも重要な可能性があります。
児童手当や出産祝い金なども一定の効果があります。
しかし、「子供1人につき100万円!」だけでは、出生率を長期的に大きく押し上げる保証はありません。
OECDの国際分析でも、家族への金銭的支援は出生率と正の関連がありますが、保育・育休ほど一貫した強さではありません。
だから私は、現金給付 < 保育・住宅・仕事との両立、と考えます。
フランスは長期間、欧州の中で比較的高い出生率を維持してきました。
2022年でも、TFR 1.79 で、OECD平均1.51を上回っていました。
フランスの場合、
などを何十年も組み合わせてきたことがポイントです。
つまり、単発の「少子化対策」ではなく、子供を持つ世帯を制度全体で優遇するという発想です。
海外事例から最も再現性がありそうなのは、
の組み合わせです。
そしてOECD自身も、「仕事と家庭を両立できる環境」+「子供のコスト、特に住宅コストへの対応」を重視しています。
ただし、OECDは同時に、こうした政策を充実させても出生率を置換水準2.1まで戻すのは難しいとも指摘しています。価値観の変化や晩婚化・非婚化など、政策だけでは変えにくい要因があるからです。